学祭が始まる、ほんの少し前――。




早苗に学校から追い出された

花音と花鈴は、家に帰らず

近くの喫茶店で時間を過ごしていた。

まだ開店したばかりなのか、

客は2人以外に男の3人組しかいない。




オレンジジュースを飲みながら、

花音はため息をついた。

慣れているのだろう、早苗が

2人と兄、そして野次馬を蹴散らす

素早さといったら、華麗の一言に尽きる。




「はーぁ、どうしよっかなぁ」


「何が」




ブラックコーヒーを飲み、

外の景色を横目で見ながら花鈴が言う。




「何がって…どうやってお姉ちゃんを

あたしたちの所へ帰って来させるか、よ。

お姉ちゃん、結構あのニセモノ家族に

馴染んじゃってるし。

帰って来て、って頼んだって

絶対無理な話じゃない?

無理矢理連れて帰れば、お兄ちゃんの時と

代わり映えしないし。

ねぇ、花鈴。いい手はないかな?」




顔も身体もそっくりな双子だが、

花音は肉体労働担当、

花鈴は頭脳労働担当と

それぞれの担当が決まっていた。




どちらも兼ね備えた兄が少し羨ましい。

だがその兄に出来なかったことが

果たして2人に出来るのだろうか。




「じゃあ、違うやり方にすればいい」


「違うやり方って?

ぁ、何かいい手があるのね?!」


「まぁね。ただコレには、

協力者が必要なんだけど…」




チラリと店の奥に座る3人組を見る。

3人組の、背の高い男と目が合った。

男はビクリと肩を震わせて、

慌てて目を逸らす。




花鈴は不敵に笑った。