「付き合ってるんじゃねーの?」


「…はい」


「はぁ?!ひと夏の青春を

ほぼ早苗ちゃんに捧げたのに、

気持ちが通じ合っただけかよ?!

お前ら付き合うまでにあとどれくらい

時間をかける気だよ…。

チューもしてないってこと?」


「ちゅ、チューだなんて!

早苗と…ちゅ、チューだなんて!

想像すら出来ないっつーの!

ってか、俺が一日何発殴られてるか

知ってるか?チューなんてしたら

半殺しだよ!おそらく!」




直之がドン引きしながら亮佑を見る。

奥ゆかしいにも程がある、と

その視線は言っていた。




「ま、円香とはどうなりたいんだよ。

付き合うつもりなの?」


「当たり前だろ。告白したんだから。

いいか?普通は告白イコール、

"僕と付き合って下さい"ってことだよ」


「はぁ…」


「まさかお前、後先考えず告ったの?」


「いや、だってまさか、

早苗も同じ気持ちだなんて思わないし」




以前、円香とも似たような話しをした。

ちょうど、この学祭について

教えられたときだ。

あの時、玉砕するとしか

思っていなかった亮佑に、

円香はかなり呆れていた。




「円香と付き合うことになったら…

遠距離になるわけじゃん?

直之はそういうの平気なタイプ?」


「お前女子みたいなこと言うな…。

俺は…まぁ、遠距離なんてしたことないし

どうなるかなんて分からないけど。

上手くいくようにする。…いや、させる!」




直之は本気で円香に惚れているんだなぁと

亮佑は変なところで関心した。




さて、自分はどうなのだろう。

亮佑は、早苗と付き合うことになったとして

遠距離に堪えることが出来るのだろうか。








答えが見えないまま、2人は

校内放送で劇の開場案内があるまで

空き教室の一角で、女子のように

恋ばなで盛り上がっていた。