適当に入った教室は1年生の教室で

学祭に向けての心掛けが書かれた紙が

黒板に貼ってあった。




「まさか円香と早苗ちゃんの

クラスだったりして?」




直之が席順が書かれた表を見付けたが

残念ながら早苗と円香の名前は

見付からなかった。

悔しそうな顔をする直之を余所に、

亮佑は窓側の席に座った。




「俺らのクラスより人数少ねーなぁ」


「だってこの学校、かなり

人数少ないらしいし。

クラスも4クラスしかないじゃん」


「へー。やっぱ田舎だからかなぁ」




喋りながら、直之は亮佑の前の席に座った。

窓の外には中庭が見え、

早苗と円香のクラスの

お好み焼きの屋台が見えた。




「腹減ったなー」


「朝飯食べたばっかだろ!

しかもお前、さっきまで車酔いで

へばってたくせに!

…まさか、円香と会うのが気まずくて

演技してたとか言う?」




亮佑の指摘に、直之は過敏に反応した。

実際、直之は車酔いをしていたが

確かに円香と会うのが気まずくて

後半は演技をしていた。

バレては仕方ない、と開き直り

直之はぽつぽつ語りだす。




「別に…気まずいわけじゃねーけど。

ただ、今は会いたくないというか。

会っちゃ行けないというか」


「…よく分からないのですが」


「んー。俺にも分かんねぇけどさ、

俺は円香に、ちゃんとした答えを

求めてんだよ。適当とかノリじゃなくて。

亮佑と早苗ちゃん見てて、

やっぱちゃんとしたいって思ったわけ」




亮佑は頭を傾げた。




「俺と早苗だって、

ちゃんとしてるわけじゃないけどな。

両想いって分かっただけで

付き合ってるわけでもないし、

これからどうなりたいとかも

よく分からないままだし」




直之が物凄く呆れた顔をする。

亮佑はまるで怒られているような気がして

しゅん、と顔を下にした。