一方、駐車場。




直之はぜぇぜぇ肩で息をして、

襲って来る吐き気と懸命に戦っていた。




「…大丈夫か?」




ばあちゃんの家に向かっている時は

あんなに元気いっぱいだったのだが。

直之は菜々子の真の力を見たとも

言わんばかりにへばっていた。




「お前、すげぇな…」


「そうか?慣れだよ、慣れ」




昨日の円香と被る。




「早くしないと、2人とも

劇の準備でいなくなるぞ?」


「わーかってる、…けど、

ハァハァ。予想外にキツイ…」




だらし無く地面に座りこみ、

直之はうなだれた。

直之は油断していた。

昨日は気を張っていたせいもあり

あまり酔わずに済んだが、

今日は"昨日平気だったから大丈夫"と

甘く見すぎていた。

菜々子の運転をナメてはいけない。




10分程その場で休み、

やがて2人は校内に入った。

ココが早苗と円香(と、立石 和馬)の

通う高校なのか、と亮佑と直之は

じっくりと校舎を眺める。




小高い丘の上にあり、

その校舎は趣はあるがどっしりしていた。




亮佑と直之は賑わう玄関前を

通過し受付に行った。

受付で、不審者対策の為なのか

校内の見取り図を手渡されると共に

記帳が求められた。

名前の下に、知り合いの生徒の名前を

書く欄があって、2人は悩んだ末に

亮佑は早苗の名前を、直之は円香の名前を

それぞれ書いておいた。

受付の髪の長い男が、その名前…

特に早苗の名前を見て、

亮佑の顔を二度見した。

やはり早苗は有名人らしい。




2人は菜々子に連絡を取ろうとしたが

菜々子はお化け屋敷の中にいたため

連絡がつかなかった。

お好み焼きの屋台に行っても、

既に早苗と円香はいなくなった後で

すれ違いになってしまっていた。




「どうする…?」




2人は仕方なく、近くの空き教室に行き

劇までの時間を潰すことにした。