屋台が完成し、材料なども

全て揃ったころ。

校内アナウンスが、学祭の始まりを告げた。

同時に花火が打ち上がり、

生徒達は歓喜の声を上げた。




早苗はアナウンスが流れる少し前に

クラスと合流していて、

キャベツの千切りを黙々とこなしている。

円香は男子と共に重たい鉄板を

何枚か屋台の中に運び入れ、

プラスチックの皿を綺麗に並べていた。




お好み焼きの屋台のすぐ隣に

小さなステージが設置されており、

吹奏楽部がミッキーマウスの

テーマを演奏しながら、

来場した子供たちに風船を配っている。




そんな吹奏楽部効果もあり

お好み焼きは絶好調な売れ行きで、

狭い屋台の中はごった返していた。




「早苗ちゃんっ!

円香ちゃんっ!」




元気の良い声に、久しぶりに顔を上げると

菜々子が約束通り来ていた。

ただ、亮佑も直之もいない。

菜々子と、菜々子のハイテンションに

早くも疲れ気味のナツばあちゃんだけだ。




「菜々子さん!ナツばあちゃん!

来てくれたんですね!!

亮佑と直之は?」


「そりゃあ、早苗ちゃんと円香ちゃんの

晴れ姿だもの。来るに決まってるわ。

亮ちゃんと直之くんなら、

多分駐車場でへばってるわよ」




円香と早苗は同時に理解した。

ある意味天才的ドライブセンスを持つ

菜々子の運転でここまで来たのだ。

慣れっこの亮佑は別として、

直之には辛い道のりだっただろう。




「お好み焼き、また後で買うわね!

あたし、お化け屋敷行きたぁい」


パンフレット片手に、

菜々子はすごく張り切っていた。


「じゃあ、また後でねー!」




菜々子に引っ張られて、

ばあちゃんも疲れた顔で笑いながら

校舎の中に消えて行く。




「あたし達もそろそろ行こっか」




時計を見ながら早苗が言う。

集合時間が迫っていた。

早苗と円香は後を託して、

体育館へ急いだ。