早苗が双子に近づく。

ギャラリーは興味津々な顔で

早苗に道を開けた。




花音が早苗の右腕に張り付く。

花鈴は早苗の左腕に張り付く。




「なんで2人とも、この時間に

そしてこの場所にいるの?」


「お兄ちゃんと一緒に来たら

すんなり入れちゃったの」


「お兄ちゃんを責めないでね。

あたし達が勝手について来ただけなの」




口々にそう言った。

早苗は2人を引きはがし、

呆れたようなため息をつく。

円香は先に教室に入って、

机に座り廊下の様子を伺う。

すぐに何人かの友人が円香の机を取り囲み

「ねぇ、岩淵さんと和馬先輩って

どういう関係なの?」

と怖い顔で聞いた。




この女子達は立石ファンクラブの

会員だったようで、日頃から

早苗に嫉妬と敵意を

剥き出しにするような連中だった。




朝から和馬が教室に来て、

おまけに可愛い双子の妹達を連れていて

その妹達は早苗を「お姉ちゃん」と呼ぶ。

学校では、ただの先輩と後輩で

通していたので、ファンクラブとしては

かなりヤキモキしているに違いない。




「まさか二人は兄弟なの?」


「…さぁ?」




ファンクラブの一員である円香は

この女子達と友好的な関係だった。

だから、いつも和馬が早苗に近付くと

どういう用事なのかしら?と

円香に尋ねている。

いつもなら冗談交じりに返すが

今回ばかりはしらばっくれるしかない。




円香はきちんと早苗から

説明を受けたわけではないが、

早苗と亮佑の様子から見て、

二人が兄弟だということは知っていた。

円香に説明しないところを見ると、

簡単に口外出来る問題ではない。




きっと早苗は、心の中で

頭を抱えているだろう。

今までごまかしてきたことが、

いよいよごまかされなくなった。