「ごめんっ、ナエちゃん!」


「まったく…で、何で眠れなかったの?

直之に告白でもされたわけ?」




――ぶっ!!




円香は盛大に自転車ごと転がった。




「ちょっと、大丈夫?!

まさか図星なわけ?」




円香は早苗の手を借りながら、

痛てて…と起き上がった。

鞄の中身も飛び散っていて、

早苗と2人でかき集めた。




「もぉ、朝っぱらから何やってんの!」


「だだだ、だって…ナエちゃんが

変なこと言うからじゃんっ!

ってか、なんで寝てないのバレたの?!」


「…目の下に隈がくっきりあるもの」




顔を真っ赤にさせて自転車を起こし、

ゴホンと咳ばらいをして

早苗と円香は歩き始めた。

道中、円香は早苗にすべてを話し

2人はキャーキャー言いながら

校門をくぐった。




靴を履きかえ、教室に向かうと

早速黒山の人だかりが出来ている。

早苗がうんざりしながら向かうと、

黒山の中心には、やはり

というか想像通り、

立石 和馬がいた。

さすが人気者である。




「ぉお、早苗!」




むさ苦しいほどの爽やか笑顔である。




「「お姉ちゃーんっ!」」




聞き覚えのある声に、

早苗は顔を上げた。




「お姉ちゃん?…ナエちゃん、

妹なんかいたっけ?」




円香も不思議そうに早苗を見つめる。




「ぁあ、父親の違う妹達がね。

…っていうか、あの子達中学生なのに

なんで校内にいるのかしら」




一般公開は10時からで、

生徒は8時半までに登校し

準備をすることになっていた。

早苗の異母姉妹、花音と花鈴は

一般人になる為、校内に入ることは

出来ないはずなのだが、

2人は兄の隣で黒山に囲まれ

にこやかに手を振っていた。