「じゃっ、あたし帰るね!」




散々亮佑で遊んだあと、

円香はそう言って立ち上がった。




「ぇえ、帰るのかよー」


「お母さんに怒られるもん。

また明日、学校でね!」




笑いながらそう言い合う直之と円香に

思わずニヤニヤしてしまう。

直之にバレて、亮佑は再び

遊びの餌食にされてしまったが。




隠し部屋で寝ている樽澤さんと

部屋で勉強中の早苗に挨拶を済ませ、

円香は菜々子とばぁちゃんにも

帰る旨を伝えた。




「えぇ、ご飯食べて行けばー?

夜道だし、大丈夫?」


「ふふ、じゃああたしの分は

樽澤さんにあげて下さい。

これくらいの道、全然平気ですから!」


「そぉ?でも心配だから、亮佑、

途中まで送ってあげて?

円香ちゃん、また明日。

楽しみにしてるわね」


「はいっ!それじゃ、お邪魔しました!」




亮佑は直之から逃れるチャンスとばかりに

円香に続いて外に出た。




夏ならまだ明るいはずの時間だが、

太陽は完全に沈み、紺色の夜空に

星が輝いていた。




「別に平気なのに」


「いーじゃん。俺も直之から逃げれたし」


「ははっ、じゃあ、お願いしよっかな」




自転車をひきながら、

円香は空を見上げた。

亮佑も一緒に空を見上げる。