決心はしたものの、

直之の頭の中は不安と緊張で

おかしくなりそうだった。

必死に冷静になろうとするが、逆効果だ。




「ぷっ…」




ふいに、円香が笑った。

おかげで、重苦しかった空気が少し和んだ。




「何笑ってんだよ」


「…だって、ぷぷっ、

直之がそんな真剣な顔するんだもん。

いつもとギャップが…ぁはは」


「俺だって真剣な顔するときぐらい

あるっつーの!普通に失礼だろ!」


「ごめんごめん…

その顔の方がいいよ、いつもより

数倍増しでカッコイイ」


「はぁ?!俺はいつもカッコイイんだよ」


「何よそのナルシスト発言。

ぁー、もう、その顔ヤメテ。

あたしの腹筋が筋肉痛になるじゃない」




まったく、これから

マジモードの告白をしようとしたのに。

これじゃムードも何もない。




直之は気を取り直す意味で、

一つ咳ばらいをした。

円香も、笑うのをやめて

直之を見上げる。




…悔しいけど、いちいち仕草が可愛いな。

ちくしょう。




直之はそんなことを思いながら

円香と向かい合うように座った。




「俺、ちゃんと言いたいから。

今まで適当にしてきたけど」




友達でいようと決めた、あの夏の夜。

だけどそれは、ただ自分の気持ちに

蓋をしていただけだ。

輝の一件があってから、やはり

自分には円香しかいないと悟った。




直之は少しだけ息を吐き、

呼吸と、心と、頭の中をスッキリさせて

はっきりと言った。




「俺、やっぱり円香が好きだ」