こうして図らずも…いや、
亮佑が珍しく気を使い、
直之と円香だけが居間に残された。
だが、どちらとも視線を
合わせようともしない。
「あっ、あたしも荷下ろし手伝おっかなぁ」
円香が逃げるようにそう言ったので、
直之は円香の腕を掴んだ。
「え、えっと…離して?」
「円香に話しがあるから。
ちょっとこっち来て」
「…うん」
諦めたように、円香は直之の後に続く。
先程と同じように、客間に移動した。
円香は、出入口近くに正座し
直之は窓側の壁に身体をもたれ掛かり
腕組みをして円香を見つめた。
……どうしよう。
ぶっちゃけ、勢いで円香を
部屋に連れて来たものの
この後の展開まで考えていなかった。
策士の直之にしては、珍しい。
しばらく、重い沈黙が続く。
口火を切ったのは、円香だった。
「…さっき、ごめん。
久しぶりに会ったからかな。
なんか、変に緊張しちゃってて…」
「俺も。…ごめん。
円香の話し聞かないで勝手なこと言った」
気持ちを落ち着ける。
――当たって砕けもしないで…
早苗の言葉が頭に響いた。
直之はその言葉の意味を噛み締めて、
きちんと円香と向き合う決心をした。
ダサい自分を、変える為に。

