菜々子の運転は、

急ハンドル急ブレーキが原則である。




「…酔った」




一緒について来た早苗と円香が

口を手で覆いながらボソッと言った。

亮佑はもう慣れっこで、余裕の表情だ。




「菜々子、あんたもう少し運転…」




上手になれないの?という

助手席のばぁちゃんの言葉は

急ブレーキのせいで続かない。

早苗と円香は、込み上げて来る物を

必死で食い止めていた。




「母さん、もっとスムーズな運転しろよ」


「ぇえ?これでも上達したのよ?」




――――これで?




亮佑以外の乗客は、心の中で

そんなツッコミを入れた。

口に出さないのは、吐き気を

押し止めるのに精一杯だからだ。




買い物の行き先は、

亮佑も1度来たことがある

大型スーパーだった。

あの時はばぁちゃんの恋人的存在の

樽澤さんに連れて来て貰った。

現在樽澤さんは、腰痛の為自宅療養中だ。




駐車場にかなり強引に車を停めると、

ヘロヘロになった早苗と円香が

地面に座りこんだ。




菜々子は不思議そうな顔で2人を見つめる。

亮佑はそんな母の頭にチョップをくらわせ

2人に水を渡した。




「ありがと…」


「う、動けない…」




そんな2人を余所に、

菜々子とばぁちゃんは先に中に入って行く。




「なんであんな元気なの…」


「ていうか亮佑、いつも

この車乗ってるの?勇者だね」


「まぁ…慣れだよ。慣れ」


「あたしには絶対無理…」




早苗は力なく下を向いた。

円香も同様に、いつものあの覇気はない。