「ここにいたんだ」




亮佑が後ろを振り返ると、

早苗が笑みを浮かべながら立っていた。




「円香と話ししたのか?」




せっかく笑みを浮かべていたのに、

亮佑はまた地雷を踏む。

早苗はムスッとしながら、

首を縦に動かした。




「で、どうだった?」


「どーもこーもないわよ。

あたし達が関わると非常に

ややこしくなるから

関わらない方がいいわ。

これは…2人の問題だし」




確かに、と亮佑が頷くと

早苗はプイっと明後日の方向を見る。

それでようやく、亮佑は自分の

失敗に気が付いた。




「なぁ…」


「畑…今年の冬は何も植えないんだって」




突然早苗は切り出した。

ばぁちゃんの体調が、

あまり思わしくないという。

医者から、少し身体を休ませろと

指示が出たそうだ。




「ばぁちゃん…大丈夫なのか?」


「平気よ、普通に生活する分にはね。

だけど、この広い畑を1人で耕すのは

そろそろ限界みたい…。

たまに、すごく身体が辛いって

1日中寝てることもあるの。

夏の終わり頃から、急に体調が…ね」


「そっか…」


「あたしも出来る限り手伝ってるけど

すごく心配だわ…」




そう言って早苗の表情が曇る。

亮佑は、一応周囲を見渡してから

早苗をぎゅっと抱擁した。

素直に早苗が甘えてくる。




「早苗、部活とか勉強で

大変だとは思うけど、

ばぁちゃんのこと頼むな」


「なんで亮佑が上から目線なのよ。

ちょっとムカつく…けど、

分かってるわよ」




ゆっくり離れる。

名残惜しそうな早苗の顔に

亮佑の胸はきゅんきゅんしっぱなしだ。