亮佑と早苗が居間に戻ると、

直之だけが縁側に座っていた。




「あれ?母さんとばぁちゃんと…円香は?」




直之はぼんやりしているのか、

外を眺めたまま動かない。喋らない。

いつもなら、亮佑と早苗の

ツーショットを見るだけで、

ヒューヒュー!とか、

いちゃつきやがって!このぉ!

とか冷やかして来そうなものだが。




「…どうしたのかしら、直之」


尋常ならざる直之の態度に、

さすがの早苗も心配してしまう。




「こっち何とかするから…円香を頼む」


「あたしに命令するなんて、

なんかムカつくけど…仕方ないわね」




早苗はそう言って、居間を出て行った。

亮佑は直之の隣に座る。




「おーい、直之?」


「ん?…ぁあ、亮佑か。

今お前の顔を世界で1番見たくないんだ…

そっとしておいてくれ」




今お前の顔を世界で1番見たくないんだ…

なんて言われて、黙ってられる奴が

おりますか、いえ、いませんよ普通!




亮佑の筋肉で出来た脳みそは沸騰し、

「あーそーですかっ!勝手にしろ!馬鹿」

脳みその代わりに言葉が飛び出した。




ふんっ!と居間を出たものの

元自室に行こうとするが

早苗の声が聞こえてきたのでやめ、

ばぁちゃんの部屋に行こうかと思えば

菜々子の声が聞こえてきたのでやめた。




「俺、行くとこない!」




早苗の部屋…なんて入ったら

半殺し確定だろう。




結局亮佑は外に出て、

少し寂しくなった畑へ向かった。

夏の頃の、あの青々とした色はない。

茶色い土が剥き出しになっていて

亮佑は何故か胸が締め付けられた。