ナツばぁちゃんが部屋に入って来た。
「挨拶は済んだの?」
「うん。久しぶりって」
「そう…良かったわねぇ。菜々実」
ばぁちゃんの喜んだ顔に、
年甲斐もなく嫉妬してしまう。
「ちょっと、あたしが帰って来た時と
全然態度が違うんですけど?」
「いいんだよ、あんたは。
だって…菜々子の顔を見れば
いつも頑張って子育てしてることが
分かるもの。菜々子はいつも、
菜々実に頼られたくて、背伸びして
無茶ばっかりする子で、いつも
冷や冷やしながら見ていたけど、
今は亮ちゃんや旦那さんがいるから
あたしは安心出来るよ」
そう。
菜々子はいつも背伸びをしていた。
みんなにバレないように、
陰ながら努力してきたのに。
やっぱり敵わない。母親には。
「ありがとう…母さん、菜々実」
菜々子はばぁちゃんの肩を揉んで、
照れ隠しをした。
写真の中で菜々実が、
微かに笑った気がした。