菜々実の写真と、久々に向かい合う。
『おかえり、お姉ちゃん』
ふわりと、そんな声が聞こえた気がした。
「ただいま。…ごめんね、
久しぶりになっちゃって」
お線香の煙りが、重く揺らめく。
菜々子は手を合わせた。
『ありがとう…お姉ちゃん。
早苗を守ってくれて…』
懐かしい菜々実の声が聞こえた気がする。
「ふふふ、あたし、早苗ちゃんの
実のお母さんにとんでもないこと
言ったんだからね。
…まさか、あの人だと知らずに」
菜々実の葬式の日、突然現れた早苗の実母。
あの日菜々子は、はっきりと言い切った。
――この子は菜々実の子供です。
でも、言って良かった。
早苗のあの笑顔、亮佑の……
いや、まぁ、本人が幸せそうなので
別にいいのだが…、亮佑のあの顔。
あの時の決断は間違えていなかった。
きっと。多分そうだろう。