花音と花鈴はその表情を見逃さない。




「「おはよーございまーすっ」」




2人は見事なハモり具合で、

朝食を終えお茶を啜っていた

早苗とばぁちゃんに挨拶をした。




早苗がすぐに気が付いて、

縁側から外に飛び出して来る。




黒く艶やかで美しい長い髪が、

早苗の動きに合わせ、

太陽の光を浴びて輝く。




花音と花鈴はうっとりとその光景を眺めた。




「花音ちゃん、花鈴ちゃん、おはよう!

どうしたの、こんな朝から」


「たまったま近くを通ったんです」


「そう、たまたまです」


「…ふぅーん?」




冷たい視線が、2人の後ろに

隠れている和馬に注がれた。

和馬は視線に耐え切れなくなったのか、

急に2人の前へ出て、咳ばらいを一つし

早苗に王子オーラを放出させながら

さも王子らしく爽やかに言った。




「おはよう、早苗。いい朝だね」


「あら、おはようございます先輩。

頭に葉っぱと蜘蛛の巣が

ついていますけど、朝っぱらから

どちらに行かれたんです?」


「蜘蛛…だと?!」




実は和馬は虫嫌いである。

演劇の練習中、何度もその光景を

目にしてきた早苗は、ニヤリと笑う。




勿論、頭に蜘蛛の巣など付いていない。

だがこれに、思春期の妹達も加わって

和馬は散々遊ばれることになった。