どうしよう。

どうしよう。

どうしよう…




心臓が、バクバク音を立てる。




どうしたらいいの…

どうしたら、いつもみたいに…




「なんだよ、まだ亮佑諦めてないわけ?」




苦笑いのような、自嘲のような

笑いを携えて、直之が言った。




「え?」




どうしていいか分からず

下に向けていた顔を、

驚いて跳ね上げた。




もしかして…

勘違いされてる?




「別に…諦めるとか諦めないとか

そういうんじゃないから。

あたしは亮佑が…す、好きだって

言ってるじゃない!」




ぁあ。また。




「だよな。分かってたはずだけど、

やっぱ傷付くなぁ〜!

なんで亮佑よりイケメンで頭も良くて

スポーツも出来る俺が負けるのかなぁ〜!

本当、俺って損な役回りだよなぁ」




違う。違うのに。




「亮佑にあって直之にないものが

あるからでしょ?

っていうかなんで来たのよー。

あたし亮佑だけで良かったのにー」




違う。違うの。




「はいはい、すんませーん。

お邪魔虫は大人しくしてっから

まぁ、頑張れば?

あの早苗ちゃんから亮佑奪うのは

大変だと思うぞ?」


「奪うつもりはないけど…

うん、頑張ってみるよ」


「ははは。じゃあ俺、戻るわー」


「ってかなんであのタイミングで

追い掛けて来るのよー!

みんなに勘違いされちゃったかも

しれないじゃん、馬鹿っ」




直之が笑いながら扉を閉める。

円香は今の自分の失言と、

直之の傷付いた顔を思いだして、




「馬鹿はあたしじゃん…バカヤローだよ…」




激しい自己嫌悪に陥った。