むわぁんとする熱気。
きゃーー♡という黄色い歓声。
間違いない。
「和馬先輩ーー♡」
直之の探し人は、ステージで
華麗に舞っていた。
アイドルかよ?!と一人突っ込むのも虚しい。
ステージが終わるのを待って、
こっそりと体育館裏に忍び込む。
だがそこには、たくさんの
カズマーズがうじゃうじゃしていた。
女子の大群に飛び込むのには
かなりの勇気が必要だが、
亮佑のため!と心が折れないように
拳を握りしめて、直之は
ずかずか出演者控え室に潜入した。
コンコン、とノックしてから
バタバタ慌ただしい控え室の中に入る。
30分おきのステージだが、
次の出演者へ部屋を譲るためなのか
忙しなく人が動き回っている。
そんな中で、立石 和馬は
ゆったりとパイプ椅子に座り
優雅にお茶を飲んでいた。
「あのぉ…すみません、
立石 和馬先輩ですか?」
「君は?」
「あ、壱逗 亮佑の友人で…」
「ぁあ!憎き天敵壱逗 亮佑の友人か!
僕に何の用かな?」
ははは…と苦笑いするしかない。
劇中は観客として一方的に見てはいたが
直接会って話すのは初めてだ。
亮佑の言う程嫌な感じではないし、
円香が言う程カッコ良くはない。
「初めまして。高橋 直之と言います。
初対面ですが、実はお願いがあって来ました」
「直之…?ぁあ、早苗から聞いたことがある。
なんだい?僕で役に立つかな?」
勿論!と大きく頷いて、
直之は話し始めた。
この事態を打破するには、
立石 和馬の協力が必要不可欠だと
確信していた。

