「お前たちの部屋だ」
そう言って案内された部屋をもう一度しっかり見る。
六畳の畳部屋。正面に大きな窓。大き目の折り畳み机。押入れの中には、多分布団。
「ごめんなさいね。部屋数が少なくて、一人部屋作れなかったの。でも、ねえ、やっぱりよくないんじゃないかしら。高校生の兄妹が同じ部屋なんて、おかしいわ」
「うー…じゃあ明日仕切りみたいなもの買ってくるか」
うん、そうだそうだ。やっぱりうちの父さんは頭のねじ数本外れてるんだ。
「眺めは一番きれいなお部屋なのよ。だから二人とも、勉強頑張って!」
綺麗に微笑む女の人。やっぱり何しても絵になるなこの人。
それじゃあ、と襖を閉められ、残された私と翼君。
とりあえず窓を開け、景色を一望する。たしかに眺めはいいみたい。遠くに海岸を見下ろすような感じで、水平線が真正面。
海は見慣れてるはずだけど、窓から覗くとまるで違う風景。
「綺麗だなー」
「うん、綺麗だね」
独り言のはずが、隣から返事。一人っ子だから不思議な感じ。
「………翼君」
今日からお兄ちゃんになる人。真っ黒なクセっ毛の、高2。
今日から彼と、同じ部屋の同じ釜の飯。
今は引っ越し業者みたいな恰好してるけど、ズボンにもなんかじゃらじゃらくっついてるしオシャンティなのか結構な大荷物。
「菖蒲ちゃーん?」
「あ、え?」
「呼ばれたから返事したんだけど。…呼んだだけ?」
小首をかしげる翼君は、さっきから思ってたけどお父さんの再婚相手の女の人にそっくりだ。
「うぅん、今日から兄弟できるなんて変な感じっていう」
「あ、俺も。これでまあソース焼きそばの呪縛からは解放されるわけね」
「ソース焼きそば?」
「母さん働いてるし。俺料理ほんとだめだから、いつもソース焼きそば。湯切りのプロだぜ」
ドヤ顔して見せた翼君に思わず笑う。
「あ、笑うと可愛いね」
「なにいきなり」
「うぅん、思ったこと言っただけだよ」
会った時からだけど、思ったことをすぐ口に出して言ってしまうらしい。
素直なのはいいことだけど、ここまで包み隠さずだといいんだか悪いんだか。
「さーてどうしようか。夕方だけど、夕飯はまだ早いよね?」
「いいんじゃない?お父さんたちどーせ帰ってこないでしょ」
「何かある?」
「翼君は?あの…えっとお母さんは、何か持ってきてた?」
「んー…どうだろ。カレーあったかな」
「じゃあカレーあったらカレー作ろ」
リビングに置いてある荷物の中からカレールーとパックのご飯を見つけて、ポットをコンセントにつなぐ。
そう言って案内された部屋をもう一度しっかり見る。
六畳の畳部屋。正面に大きな窓。大き目の折り畳み机。押入れの中には、多分布団。
「ごめんなさいね。部屋数が少なくて、一人部屋作れなかったの。でも、ねえ、やっぱりよくないんじゃないかしら。高校生の兄妹が同じ部屋なんて、おかしいわ」
「うー…じゃあ明日仕切りみたいなもの買ってくるか」
うん、そうだそうだ。やっぱりうちの父さんは頭のねじ数本外れてるんだ。
「眺めは一番きれいなお部屋なのよ。だから二人とも、勉強頑張って!」
綺麗に微笑む女の人。やっぱり何しても絵になるなこの人。
それじゃあ、と襖を閉められ、残された私と翼君。
とりあえず窓を開け、景色を一望する。たしかに眺めはいいみたい。遠くに海岸を見下ろすような感じで、水平線が真正面。
海は見慣れてるはずだけど、窓から覗くとまるで違う風景。
「綺麗だなー」
「うん、綺麗だね」
独り言のはずが、隣から返事。一人っ子だから不思議な感じ。
「………翼君」
今日からお兄ちゃんになる人。真っ黒なクセっ毛の、高2。
今日から彼と、同じ部屋の同じ釜の飯。
今は引っ越し業者みたいな恰好してるけど、ズボンにもなんかじゃらじゃらくっついてるしオシャンティなのか結構な大荷物。
「菖蒲ちゃーん?」
「あ、え?」
「呼ばれたから返事したんだけど。…呼んだだけ?」
小首をかしげる翼君は、さっきから思ってたけどお父さんの再婚相手の女の人にそっくりだ。
「うぅん、今日から兄弟できるなんて変な感じっていう」
「あ、俺も。これでまあソース焼きそばの呪縛からは解放されるわけね」
「ソース焼きそば?」
「母さん働いてるし。俺料理ほんとだめだから、いつもソース焼きそば。湯切りのプロだぜ」
ドヤ顔して見せた翼君に思わず笑う。
「あ、笑うと可愛いね」
「なにいきなり」
「うぅん、思ったこと言っただけだよ」
会った時からだけど、思ったことをすぐ口に出して言ってしまうらしい。
素直なのはいいことだけど、ここまで包み隠さずだといいんだか悪いんだか。
「さーてどうしようか。夕方だけど、夕飯はまだ早いよね?」
「いいんじゃない?お父さんたちどーせ帰ってこないでしょ」
「何かある?」
「翼君は?あの…えっとお母さんは、何か持ってきてた?」
「んー…どうだろ。カレーあったかな」
「じゃあカレーあったらカレー作ろ」
リビングに置いてある荷物の中からカレールーとパックのご飯を見つけて、ポットをコンセントにつなぐ。
