「………お父さん」
「うん?」
さっきからずっと車を走らせている父に声をかけた。
「ねえ、どこ行くの?朝起きていきなり出掛ける準備しろって」
「はは、着いてからのお楽しみだ」
今日の父は、いつもにまして陽気だった。
休日の朝だと言うのに、高校生の娘の部屋にノックもなしに入ってくるなり窓を開け、出掛けるから5分で準備しろと高らかに宣言した。
春と言ってもまだ肌寒い。
窓から吹き込む風に完全に二度寝する気を削がれ、私は父に急かされながら起きることとなった。
そんなこんなで、強引に起こされた私の機嫌は悪い。
「そんな思わせぶりなこと言ってないで教えてよ。お父さん、変だよ。日曜の朝なんて1番寝たがるのに」
「はははっ、気になるか。教えてやろうか。今日は父さん機嫌いいからな」
ハンドルが思い切りきられ、山道の急カーブを勢いよく曲がる。
「!ちょっとお父さ、」
「父さんな、再婚決めたんだ」
