深夜1時。ようやく仕事が終わり、ただいまと言いながら部屋に入った。いつもの通りブーンと冷蔵庫が返事をする。

電気を点けようと電気の紐に手を伸ばして、ちょっと待てよと動きを止めた。
電気の下に敷いてある布団が盛り上がっていたのだ。

強盗かと考えたところで、今日の朝のことを思い出した。

「実は、嬢ちゃんにプレゼントがある」
「わーい」
「もっと喜べ!」
「………何それ。鍵じゃん」
「俺んちの鍵だよ。夜中に家の前で待たれちゃ、通報されかねないからな」
「わたし、もらっていいの?」
「好きにしろ」

合鍵渡すなんて、人生で初めてのことだった。しかも相手が見ず知らずの女子高生なんて……。

その鍵が悪用されるんじゃないかという恐怖はなかった。知り合って日が浅いのに、なぜだか俺は彼女を信頼していた。
毎日コンビニ弁当の俺には手作り料理には勝てなかったというのか。胃袋をガッチリ掴まれたな。
こうして結婚詐欺というものが成り立ってゆくのかもしれない。

そんなどうでもいいことを考えつつ、再び布団に視線を移した。