そろそろ赤の他人から友達ぐらいにはなってもいいころだろ?いや、友達より兄弟が近いか。彼女もそう思ってるはずだし、ちょっと反応を楽しみにしてたのだが。別にどうってことなかったか。

もっとこう、“嫌だ、行かないで!”とか“私も行く!”とかを期待してた。そろそろ甘えを見せてもいいころだろ?いや待て、俺は彼女に何を求めてるんだ。

「……何しに行くの?」
「………ん!?」

イロイロ考えていた俺を現実に引き戻したのは、素っ気ない彼女の質問だった。

「だから、何で実家にかえるの?」
「あぁ。母ちゃんが帰って来いってうるさいからよ」
「何日ぐらい行くの?」
「長くて三日」
「………そう」
「ここ、別に使ってもいいからな」
「うん」
「メシ代置いとくから使えよ」
「いらない」
「使えよ。俺、残念ながら金が余ってるんだ」
「花束をプレゼントする彼女もいないしね」
「だまれ小娘」

そんなこんなでくだらない会話をしているうちに、なんかすげぇ不安が襲ってきた。果たしてこの子を一人にして大丈夫か。

これが彼女の最後の会話だった。とか、あり得なくは無い。

「嬢ちゃんさ、寂しくなったら電話しろよな」

何で?と最大限に現した顔を俺に向ける。やめろよ、ちょっと傷ついた。

「ひとりは慣れてる」

名前呼んだら来てくれる。気まぐれで尻尾ふりながら自分から近づいてくれる。でも此方から撫でようとすると逃げてく。

こっちが受け入れる覚悟が出来てても、あちらがあれではどうしようもない。