夜、いつものようにヒロキから電話がきた。
変わらない、ヒロキの声。
あたしやっぱりヒロキが好きだよ。
離れたくなんてないよ。
そんな時、いきなりヒロキの言った一言に、あたしの心は揺れた。
『そういえば、本当にサクラには何もされてない?』
ヒロキはあたしを心配して言ってくれた。
だけど、今のあたしには間違った言葉だったんだ。
「うっ…っ……」
あたしは堪えきれずに涙を流した。
捨てられた上靴
落書きと破られた跡のある教科書
“死ね”と書かれた手紙
イタズラ電話
サクラにされた全てのことが頭の中に浮かんできて、あたしは抱えきれなくなった。
『ナオ…?』
泣くあたしに、事情の分からないヒロキが声をかける。
人間、追いつめられた時って、弱い言葉しか出てこないんだね。
「……別れよっ…」

