家に帰ると、携帯を前に置いて座った。
見えるわけじゃないのに、鏡で髪を整えたりして。
ヒロキから電話がくると思うと、自然に顔がほころんだ。
すると、携帯が震えた。
あたしは急いで携帯を取って開くと、
《早瀬ヒロキ》
の文字が表示されていた。
通話ボタンを押して耳に当てた。
「もしもし?」
『もしもし、ナオ?』
電話の向こうから聞こえてきた、大好きな人の声。
「ナオですよ」
『ふっ…何だよその返事』
ヒロキが笑ってる。
あたしも自然と笑顔になった。
『サクラから、まだ嫌がらせされてる?』
「うん、ちょっとね。けど、あっちはあたしたちが付き合ってるの知らないし、そんなにひどくはないよ」

