私と派手男の出会いは普通なものだった。

ただ同じクラスになっただけ。

その派手男というのは菊池 透弥(キクチ トウヤ)のことである。

透弥は別に不細工というわけでもなく、とびっきりのイケメンというわけでもなく、多分私の中で言えば標準の顔である。

透弥は3組の賑やかで派手なグループのリーダー的な存在で、透弥の周りには元気のいい男子が集まっていた。

透弥はそれから授業が始まるようになると、授業中もワイワイと席の近い男子と話しまくって担任の先生に注意をされまくっていた。

私は前の席の出席番号2番の芦野 龍太郎(アシノ リュウタロウ)とだんだん話をしていくようになり、少し仲が良くなった。

龍太郎に聞くと透弥は、自分の思い通りにならないと気に入らない我侭な性格らしい。

思い通りにならないと気に入らない性格の我侭さんは世界にいっぱいいる。

私の姉の麗羅(レイラ)だって我侭さんだし、私が4年生の時に同じクラスで同じグループだった渡辺 文菜(ワタナベ アヤナ)も我侭さんで、あーちゃん(あやなのことをそう呼んでいる)の我侭によく振り回されたものだ。

あーちゃんの気に障った行動を何度もしてしまったせいで、仲間外れにされることが4年生のときは多々あった。

私はあーちゃんの事が大嫌いだった。

私だけでなく、同じグループの(あやなと私をのぞいて4人中)2人は、あやなのことを嫌っていたので、よく3人であやなの愚痴大会をしたものだ。

そうやって我侭さんはみんなから嫌われていく。

透弥も嫌われていくのではないだろうか。

私も前までは友達と一緒に今の透弥みたいにたくさん笑ってたくさんはしゃいでたのにな。

学区編成さえなければ今を楽しむことができたはずなのに・・と、学区編成のことを私は何度も何度も恨んだ。

私は後ろの席の4番の女の子、天野 晴香(アマノ ハルナ)ちゃんや隣の席のT小からきた同じ地区の男の子、奥山 隆文(オクヤマ タカフミ)や、龍太郎達とだんだん仲が良くなっていって、席に着いている時は最初より退屈ではなくなっていった。

でも席が近い人やT小からきた人達としかまだあまり話したことがなく、もちろん透弥とも話した事がなかった。

隣の席がもし透弥だったら・・きっと愉快でとっても楽しそうだと思う。

隣の席じゃなくてもいい、前後でもいいから近くの席になりたかったな。

透弥と・・喋ってみたいなあ・・。

そんな事を思って過ごしていたある日のこと。

「頭割れてるくね?」

ついに透弥と喋るチャンスがきたというのにノリ気になれなかった。

私はその頃ツインテールで分け目が見えていた。

それを透弥は頭が割れてると言ったので少しムカついた。