「誰もいない…?」

広がるのは見慣れた共同廊下。
はぁ、と軽く肩で息をはく。

良かった、イタズラか。
いやイタズラは良くないけど…あぁそうか!気のせいか。
そういうことにしておこう。

そう自分に言い聞かせ玄関を後にする。
ふと時計を見上げればもう8時を回っていた。

「あれ、もうこんな時間!?」

急いで鞄に教科書などをつめこみ、慌ただしく靴を履く。

電車の時間に間に合うかなー
と焦りながらガチャ、とドアを開ける。


…………………あれ?


「えっ?えっ?あれ?」


目の前に広がるはずなのは、マンションの共同廊下。なのに今広がっているのは、黄土色の砂が舞う大地。

「ちょ、ま、ええっ?」

ばっと後ろを振り向けば、
いつもと変わらない部屋が広がっている。

私、引っ越したっけ?
…こんな砂漠のような場所に?
こんなとこ引っ越したら学校行けないよな…

などと冷静に考えつつ、砂漠の大地に足を踏み入れる。


ザザザザーッ

「わあっ!!」

強い風がキリを襲う。
目の前が黄土色の砂で埋め尽くされ、ついドアから手を離し顔を守る。

……―ガチャン。