「七瀬くんは、王子って呼ばれてたんです。そこからいろんなことを想像してしまって…誰にも見向きされない裏庭の植物を一人慈しむ姿や傷ついた仔猫に優しく差し伸べる手…誰にでも優しくてそれでいて決して見返りを求めたりしない。孤独を愛したけど本当は寂しがり屋などつい止まらなくなってしまって…」
「そ、それは人違いでは…?」
「いいえこの目に狂いはありません。その分期待が大きすぎて、現実とのギャップに思わず…」
「そういうのって便利なのかもしれないけど…“枠”で人を計ってたら見えないものもたくさんあるんじゃない?」
「ごめんなさい…言ってる意味がよくわからないです。」
私は、咲耶ちゃんが言ってる裕也が単純に、想像できなかった。
裕也のことを私のほうがわかってないかもしれない。
けど、咲耶ちゃんは王子だから、裕也のことが好きになった、としかあの言い方だと受け止められない。
好きになる理由なんて人それぞれだけどさ
ちゃんと“人”を見て少しずつ知っていくのも楽しいと思うよ?
何か考えごとをしていた咲耶ちゃんが、意を決したように、私に向き直った。
「美桜ちゃん、七瀬くんのこと協力してくれませんか!?」
「えっえええ!!??わた、私!?」
「はい。さっきから見ていると、美桜ちゃんと七瀬くんは仲が良い様子。だから、お願いします。」
そんな真っすぐ見られたら、断りにくいよ…
やんわりと、あくまでやんわりと断ろう。
「私、そんなに仲良くないよ?協力とかわかんないし…」
「いいんです!!お願いします!!私には、1週間しかないんです…」
必死に頼まれてもできないものはできないし。
うわーんどうしよう!!
咲耶ちゃんの目が潤ってきた。
やばいっ私が泣かせちゃったよ…
「そ、そうですよね。私なんてダメですよね。ごめんなさい図々しく頼んだりして…」
「ダメじゃないっダメじゃないよ!!」
私はもう何が何だかわからなくて、ただアワアワするばかり。
「じゃあ協力してくれますか!?」
「うん!!するする!!」
思わず言ってしまった…
今更気づいてももう遅い。
やっちまったよ、私…