初恋のキミへ。

+美桜side+



土谷先生が教壇でしゃべってる。

だけど、何も聞こえない。
何も感じない。


因果応報、地獄に堕ちろ!
――――ァァァァ!

頭の奥で、叫び声が響く。
「あんたのせいよ!!」と声がする。
「許して下さい」と声がする。
小学4年生のあの日の私だ。


いやだ、やめて
どうしていきなり思い出したのかわからない。
呼吸が乱れてくる。


体の末端が徐々に冷たくなっていき、
ああ、こうやって人は死んでいくんだ、と
半分抜け出した魂がつぶやく。


世界は白く光るだけのかたまりとなり、
あんな恐ろしい世界になど行きたくないのに、
魂が体を離れようとする―――――と、左手をギュッと強く握られた。


「行こう!」

力強い声が耳元で聞こえる。
ぼんやりとかすんだ視界に、葵が映る。


私の手を握ったまま、SHR中にも関わらず、ドアに向かって一気に駆けだした。
手を引かれるままに、足が動く。


廊下を走り抜け、職員室の前を横切り、階段にまわり、一段飛ばしで駆け下りる。
ラスト数段。


「跳ぶよ!」

葵の声が耳元で響き、体がふわっと浮いた。

着地してそのまま、1階の廊下を駆け抜ける。
東棟校舎を駆け抜ける。
南棟校舎を駆け抜ける。
グラウンドを駆け抜ける。
正門を抜けて、道路を駆け抜ける。


先生がいる。
生徒がいる。
妊婦がいる。
おばさんがいる。
子供がいる。

そんなのおかまいなしに走る。