初恋のキミへ。

「いや、ごめんね、とかじゃなくて。どしたの?いつもの美桜ちゃんらしくないよ」

「そうそう。裕也のこと嫌いになった?」

「うん。嫌い、大っ嫌い」


大嫌い、大嫌い、大嫌い
頭の中で繰り返す。

ほら、美桜。嘘をつくのは得意でしょ?
自分の気持ちを押し殺すこと、できるでしょ?
いつもやってたことじゃない。


「本当に?違う理由があるんじゃないの?」


早く『本当だ』って言いなよ。
言わないと怪しまれるじゃん。

わかってる、わかってるよ
でもね、口が動かないの…

どうしてこんなに胸が痛むのだろう。
涙が出そうになるのだろう。

いくら作り笑いをしたって泣かなかったじゃん。
怒られたって、へらへら笑っていられたじゃん。

なのに、どうして?
たった一言ですむことが、どうしてできないの?


「嫌い、裕也なんて…でもね、でもね、本当は…」

私の言葉はチャイムの音でかき消された。


「え?ごめん。よく聞こえなかったから、もう一回言ってくれる?」

「だから…」


「おいそこ!!さっさと座れ~もうチャイムは鳴ってんぞ。」

タイミングがいいのか悪いのか、土谷先生が教室に入ってきた。


「はーい。また後でね、美桜」

ポンっと頭を触って、伊吹は自分の席に座った。
皐月は笑ってるし、葵はあきれてるし、理玖はわけわからんって顔してるし。
裕也は…固まってるし。

みんな真剣に受け止めてないのかもしれない。


私だって…
あの時、チャイムが鳴ってよかったけど、あのままだったら…
自分の本当の気持ちを言ってしまいそうだった。