「ねぇ美桜、大丈夫だった?あの、新崎…」

葵から切り出した。


「全然平気!!って言ったら、嘘になるけど、前よりは怒りがなくなったよ。」


うん大丈夫、大丈夫。

私は自分に言い聞かせているだけかもしれない。



「そっかなら良かった。たぶん、あいつ関係ないと思うんだけど…」


「わかってる。けど、同じ名字を聞くだけでダメなんだ。まあ私のせいなんだけど!!」


私は、アハッと笑った。

笑える気分じゃなかったんだけどね…

笑ってないと、どうにかなりそうだったから。


「あの交通事故は美桜のせいじゃないよ!!あの運転手が、あの新崎ってやつが悪いんだよ!!」


「ありがとう、葵。でも私が悪いの。そう全部、私が。」


「…美桜」


葵、そんな悲しそうな顔しないで。

大丈夫だから。

でもね、やっぱりダメなの。

新崎って聞くだけでもダメだし、口に出すのもイヤ。

だから、私は“新崎くん”と呼べない。



「バイバイ葵。」

「うん、また明日」

「また明日、会えるといいね…」


―――私は、この会話が誰かに聞かれてるなんて、夢にも思わなかった。