カタッ

前の席の女が椅子を引いて、立った。



「中村美桜です。趣味は~…」


中村、美桜…

やっと名前がわかった。

よく似合う、きれいな名前だと思う。

ずっと聴いていたくなる澄んだ声。


やっぱ好きだなぁ。こいつの何もかもが好きだ。



「おいっ次、裕也の番。」

めんどくせぇ。ずっと中村でいいじゃん。



「七瀬裕也で~す。テキトーにやるんで、よろしくお願いしま~す。」



周りの女たちがざわめく。

ウゼぇ…


20秒で終わらせた自己紹介。

その間、中村の瞳には俺が映っていた。

でも、中村は俺のことを見ていたのだろうか。

違う気がする。

中村は俺をとおして、誰を見てたんだ?