「うん」
そう言うと、蓮は角に置いている憂の鞄を持ち、渡した。
「はい、鞄。 帰ったらメールして。 ちゃんと帰れてるか心配すっから」
(‥心配?)
蓮がいう心配は友達としてだろう。
でも、蓮がする仕草
蓮が言う言葉
全てが憂には特別に思えてしまう。
(‥‥お願いだから‥‥蓮くん‥期待させないで)
「うん、メールするね?」
「気をつけて帰って」
「もー。 心配しすぎ」
「心配するよ。 もう暗くなるし」
体育館のスタンド席の窓からはオレンジ色と紫色の空が見えた。
「ホントだー。 じゃあ、明日ね」
蓮に手を振り、体育館を出た。
