榊原憂(サカキバラウイ)が彼を知ったのは高校2年の修学旅行だった。



修学旅行といっても、もう終わりらへんで。



新幹線で帰る辺り。




疲れて眠かった憂は、真っ暗な新幹線の窓をボーッと見つめていた。



「ねぇ、憂」


「んー?」


隣に座っている悠ちゃんに話しかけられ、歯切れの悪い返事をする。



「あの人‥知ってる?」



憂はゆっくりと首を通路を挟む隣の座席へと向けた。



「‥‥」



そこに座ってるのは携帯電話をつつきながら、眠そうにしてる男。




長い睫毛に、二重の瞳。


女より綺麗なんじゃないかと思うくらいの肌。


どっちかというと、女っぽい顔で、黒髪。


無造作に着崩した制服が似合っている。


俗にいう、イケメン。



(え‥‥誰よ?? まったく、知らないし)