ほっと一息する時に【短編集】



私の醜い惨めな本音がポツリポツリと零れる。




「私じゃなくても...たくさんいる」



「俺は...!」



「だってこんな体じゃ、立ったまま抱きしめることも、キスも、自由に移動も出来ない!!
そんな...こんな不自由な女、誰が一緒に居てくれるの...」




あぁ、いやだ。
もう、醜くてこんな私が恥ずかしい...




「自分に自信がない...」




すると彼は私にゆっくりと微笑み、跪いて目線を合わせた。




「やっと、本音が聞けた」




彼にとっては些細な事。
私にとっても横移動とか、立ったままでの抱擁とか、キスとか、全部当たり前の事だった。

だけどそれが私には夢になった。なってしまった。




「菜乃葉、車椅子を見に行こう。今は起立状態にさせてくれる車椅子もあるんだ」




そうして私の頭を撫でてくれた彼の手はとても温かかった。