――涙に濡れた先輩の横顔は、消えてしまいそうなくらいに痛かった。

走って探したそこには、悲しみを背負った、私の求めた人がいた。




“俺はもう…っ、大切な人を…、守れないんだ”




違う。

先輩が悪いんじゃない。


先輩は、なにひとつ悪くない。
大丈夫。

あなたはこの先、なにも気負いすることなく、生きていい。
償わなければいけない罪など、ない。




「――こんな言葉なんて…っ、
先輩にとって、なんの支えにもならないっ!」




私の流した涙の量など、先輩の傷の深さには敵わない。

私の苦しみの言葉など、先輩の無念の思いには敵わない。




なにが、『先輩を幸せにする』だ。
なにが、『先輩を守る』だ。


他人でしかない私が、一体先輩に、なにができるというのだ。



甘ったれたこと言って……っ、

なにが、『先輩が好きです』だ。