先輩の受験が、あと4ヶ月に迫った。
難関私立校を目指す先輩は、この秋から受講できる、『志望校別対策コース』も受け始めて、さらに忙しそうだった。
「受験生だからな。しょうがないよ」
ちょっと困ったような顔で、先輩は言っていた。
…来年は自分が、先輩と同じ立場になるんだ。
そう思うと、不安しか浮かばない。
先輩は、辛いことがあるのに、さらに受験という壁に挑む。
その強さは、私にはないと思った。
―なんだろ。この胸の苦しさは。
先輩にはあって、私には無いもの。
そんなもの、たくさんあるはずだっていうのに。
先輩はどんどん、前に進んでいく。
後ろへ振り向かないように、強く強く。
私は…
私は、どうなんだろう。
ちゃんと前に進めているのか。
足踏みしてるだけなんじゃないか。
先輩を支えなきゃいけないのは
私のほうだって、いうのに。