「俺はさ。強いわけでもないし、頼りがいがあるわけでもないし、本当にだめなやつなんだ」


「……っ、」


「きっとまた、弟のこと思い出して、思わず暗くなることもある」


「……はい」


「そういうことがあっても、俺の心配は、しなくていいよ。
ちゃんと前を向いてるはずだから」


「…はい、っ」



まだ嗚咽の止まない私を、先輩はさらに強く、抱きしめた。

こんな幸せは知らない、と思った。

そして、先輩のことを、どんなことがあっても支えようと思った。






「そうだ。

お前、俺が藤原のこと好きだと、思ってたんだろ?」


「え…っ、はい…」


先輩の温かな腕の中で、うつむきながら答えた。

今、私、幸せだ。


「なんで、そう思ったの?」

「だって…先輩、梨花と、仲よさそう、だったから…」

「かわいいな、茜」

「な、っ!……」


赤く熱くなった私を見て、先輩はクスクスと笑って、頭を撫でた。


――そんな先輩は、
やっぱり、ひどく優しかった。