先輩と、ふたりぼっち


「ねえ、茜」

「……っ」



ひどく、優しい声。



「俺はね、悲しかったよ。弟が、いなくなっちゃったときはね。
これ以上にないくらい、泣いたよ」

「…っ、」


「今でもその気持ちが、消えたわけじゃない。
叶うことなら、会いたいよ、弟に」

「…っはい」


「でもね。
いつまでも、こうしてるわけにはいかないでしょ?」

「……はい」


「だから俺は…――
弟の分も、精一杯生きるつもりだよ」

「…っ、はい」




「こんな俺を…

側で支えてくれたら、嬉しいんだ」




もう、私の声は出なかった。

代わりに、何度も大きく頷いた。