――目が覚めて、夢だと気付いたときには、もう遅かった。 昨日、いつものように塾に行った。 いつものように授業を受け、 いつものように電車に乗って帰ってきた。 だが、思い返せば一つだけ。 違うことがあった。 「あ、ちょっと開けててくれる?」 「え?あ、はい」 7階に行きたかったのに、2階で止まったエレベーター。 運が悪いなぁと思っていた私に、声をかけた年上と思われる人。 言われたようにドアを開けて待っていると、その人は乗り込んできた。 「ありがと」 「…いえ」