「―茜、どうしたの。
今日、やけに顔赤くない?」

「―そう?」


できるだけ、話しかけないで。
今は、この余韻に身を任せていたい。


「熱でもあるんじゃないの…
大丈夫?」

「大丈夫だよ」


…先輩と同じ、体調を気遣う言葉。
胸が、苦しくなる。



ふと、自分の席から前方を見ると、ある変化に気付いた。

高い位置でポニーテールをした、いかにも優等生っぽい感じの女の子が、一番前に座っている。



「―新しい子?」

小声で梨花に聞く。

「たぶん」

まだ、梨花も話しかけていないようだった。



「ねぇねぇ、話しかけてみない?」

「……っ」



違う。
梨花の言葉に顔をしかめたんじゃない。



―先輩との、先ほどまでの距離感が

よみがえってしまったから。