「エレベーター、乗る?」 「…っ、はい」 この前と、逆だ。 先輩が、ボタンを押して待ってくれている。 急いで傘をたたんで、飛び乗った。 「…ちょっとだけ、久しぶりだね」 「…はい」 狭い空間に、先輩とふたりきり。 心臓は波打って、破れてしまいそう。 「…肩」 「…え?」 「肩。濡れてる」 先輩が 青いハンカチをポケットから出して ――私の肩を、優しく拭いた。