少しだけ、近づいた。 先輩に、幸せに。 髪をかきあげながら、先輩は言った。 「今日は藤原がいないから、ゆっくり話せるよなー」 嬉しいのに、悲しい。 なんだろう、モヤモヤする。 梨花の名前が、 先輩の唇をすべって、私の心の深いところまで突き刺さる。 …言わないでほしかった。 今だけは、今の時間だけは、 私のことだけ考えてほしかった…―― ―ガチャッ 「ハルー! 数学の答え見せて……って、え? その子だれっ?」