「もっといろんなこと聞けばよかったのにー」とか言いながら、梨花はまた携帯をいじる。
私は、数学のテキストを、カリカリとひたすら解く。
…ほとんど、内容は頭に入ってこないけど。
いつものように授業をうけて
いつものように電車に乗って帰った。
授業前は、いつものようじゃなかったけれど。
先輩と話せて嬉しかったはずなのに
気持ちの悪い空気が私に張り付く。
何回ため息をついたのかわからないほどに、体を雲が覆う。
もう、ひどい重症だ。
恋の病にかかった、悲しい哀しいひとだ。
幸せじゃない。
不幸でもない。
先輩が好きだ。
先輩が嫌いだ。
可愛いと言われた。
嬉しかった。
梨花と話して、先輩は照れた。
寂しかった。
先輩が好き。
先輩が大好き。
でも、先輩が大嫌い。
―今の私には、矛盾が多すぎた。