「ねぇねぇ茜」
教室に入ってくるなり、梨花が少し興奮気味で、私に話しかけた。
「…なに」
「さっきね、今井先輩が…
茜のこと、可愛いって言ってたよ」
――嘘つき。
先輩の、嘘つき。
馬鹿じゃないの。
私が可愛いわけがない。
先輩の中は、梨花だけでいっぱいなくせに。
「先輩と、どんなこと話したの?」
「…え」
「ねぇ、教えてよー」
“先輩のことが好きです”っていう気持ちが、丸見えだ。
完全に私に、“先輩には近づくな”って言ってる。
「どこの学校行ってるのか、とか。
ほんと、それぐらいだよ」
「ふうん。つまんないのー」
あ、今絶対、ほっとした。
私が答えたあと、ちょっとだけ安心してたもん。