「藤原、なんでこんなとこにいんの」

「あ、トイレ行こうと思って」

「…そうか」



…本当に?
本当にトイレに行こうとして、ここに来たの?

違うでしょ。
“先輩に逢いに”来たんでしょ。




「あの……っ、さよなら」














私はとことん馬鹿だと思う。


エレベーターで会ったときに、先輩の顔を見なければよかった。

そうすれば、先輩を好きになんてなってなかったのに。



先輩と梨花が、自分の目の前で話していた。
そのシーンはしっかりと、目の裏に焼きついてしまった。

目を閉じていればよかったのに。
すぐに立ち去ればよかったのに。





それでも私の瞳は



一秒でも長く刻みつけようと



必死で先輩を映していた。