「藤原、なんでこんなとこにいんの」
「あ、トイレ行こうと思って」
「…そうか」
…本当に?
本当にトイレに行こうとして、ここに来たの?
違うでしょ。
“先輩に逢いに”来たんでしょ。
「あの……っ、さよなら」
*
私はとことん馬鹿だと思う。
エレベーターで会ったときに、先輩の顔を見なければよかった。
そうすれば、先輩を好きになんてなってなかったのに。
先輩と梨花が、自分の目の前で話していた。
そのシーンはしっかりと、目の裏に焼きついてしまった。
目を閉じていればよかったのに。
すぐに立ち去ればよかったのに。
それでも私の瞳は
一秒でも長く刻みつけようと
必死で先輩を映していた。
*