「…もしかして、この前のエレベーターの子?」

「…っ、はい」



嬉しかった。
純粋に嬉しかった。

先輩は、2週間前のことを、覚えていてくれた。
もうとっくに、忘れてしまったと思っていた。



「この前は、ありがとう」

「…いえ、そんなこと…」



うまく話せない。
直視できない。

逢いたい、逢いたいと、願っていたはずなのに。

幸せを目の前にすると、どうしても距離をとりたくなる。



「君…俺と同じ学校じゃないよね?
どこの学校行ってるの?」

「…桜東学園です」

「女子校?すごいね」



―先輩が、優しく、ふわりと笑った。