ここの校舎は偶数階にしかトイレがないから、一番近い場所でも、6階か8階に行かなければならない。 なんとなく、気分的に6階へ行った。 なんとなく。 そう、なんとなく。 ただ、トイレに行った。 重い空気に覆われたまま。 ただ、あのピンクの携帯を、 幸せそうな横顔を、 これ以上、自分に記憶させないため。 そこに向かっただけなのに。 ―先輩がいた。