…やっぱり私は、先輩が嫌いだ。


嫌いだ、嫌い。
だいっきらい。


さっきから、梨花の携帯のバイブレーションは治まらない。

梨花の意識も、常に携帯にあって、私と会話をしていても、どこか上の空だった。



――やっぱり、嫌いだ。


梨花を好きな先輩が嫌い。
先輩を好きな梨花が嫌い。


…醜い自分が嫌い。









「あ、茜。
明後日の塾、私休むから、悪いけど宿題メールしてくれる?」

「うん、別にいいよ」



こういうときに断れない自分も、嫌い。



「……ねぇ、茜。
今日、なんかテンション低くない?」

「えっ?…ううん、別に元気だよ?」



こういうときに、笑顔を作る自分も、嫌い。



「そっか。それならよかった!」



人を心から心配できる、素直な梨花が嫌い。