[完]大人の恋の始め方






付き合いだしてからは、お互いを"杏里""大翔"と呼び合った。



一般のカレカノらしいことは、全部出来なくても、毎日会える事で、あたしの幸せは、満タンだった。




ただ、やっぱり大翔は人気者。


いつも女の子に囲まれていて、正直妬けた。



友美にも、何度か「顔怖い」って言われた。


バレちゃいけないのに、身体が勝手に大翔に溺れて、反応が強くなる。



でも、この事は誰にも相談できなかった。



そんなある日。



「このクラスに、松本杏里っている?」



突然、話した事もない男の子が、あたしを訪ねてきたのだ。



「…あたしなら、いますけど。」


あたしが彼の前に行けば、彼はあたしをなめ回すように見た。


「へぇ、君が。」



なんか、こんな見られるのって、嫌だな。



「ちょっと話あるから、着いてきてくれる?」



「え」


着いてきてくれる?とか言いながら、彼の瞳は、否定を許さなかった。



あたしは、仕方なく、渋々彼に着いて行った。



向かった先は屋上。


12月真っ只中の屋上は、凍死するほど寒い。



「俺の事、知ってる?」



突然口を開いたかと、思えばそんな質問。



「ごめんなさい。ちょっと分からないです」



てゆーか、あなたみたいな怖そうな人、知りませんっ!!!