[完]大人の恋の始め方






体育祭を明後日に控えた、この日の放課後。



実行委員室として使っている空き教室で、あたしは最後の確認をしていた。



当日の皆の動きや、仕事。


それぞれの物品の在りかなど、紙にまとめる。



この日は、皆既に帰ったために、あたしは一人でいた。



初めての実行委員。


あたしなりに一生懸命やって、皆もついて来てくれている。



その仕事も、明後日が最後。


ちょっと寂しい気もした。



窓から、校庭を見ると、サッカー部が一生懸命ボールの取り合いをしていた。



あたしも、そろそろ部活に行こう。



そう思って、振り返ると、ドアに寄り掛かった大翔先生が目に映った。



「よぅ。一人でどうしたんだ?」


「紙に、まとめてたんです。先生に渡そうと思って」



あたしの言葉を聞き、先生は紙を覗き込む。



「いつも思ってたんだけど、松本ってほんと字キレイだな」



まるで、感心するかのように、あたしの字をまじまじと見る。


「別にキレイじゃないですよ」



むしろ汚い…。


「まぁ、すくなくとも、俺よりキレイだ。今から部活か?」



「はい、バレーボールをしに行かなくては!」



あたしは、かばんをとり、行く準備を始める。